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Channel: 瓜田純士
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木漏れ日

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二人は春の木漏れ日の夜の桜の美しさよりも、



冷たい夜風に建ち並ぶビルのネオンよりも






愛しあっていた。



止められない二人の激情に




いつも邪魔が入っては
抗った。





コイツの為に 
  
全てを失ってもいい





まだ
その覚悟は二人には



いや




僕にはなかった。 



二人は次の桜が咲く頃迄
逢うのはやめよう
と約束した。





アイツは目に涙を浮かべたのを鮮明に記憶している。





人を好きになるのは恐ろしく



人に愛されるのは怖くない




それから二人は別々の一年を過ごした。   



次の桜を毎晩夢見て




誰もが新しい生活に慣れる。



慣れる頃


恋人も出来る。 



僕には恋人が出来たが 


どれだけ体を重ねても
いつもアイツと桜が頭をよぎっていた。



その時の恋人には申し訳ないと思ってる。




一年は早い


昨年の終わり    

アイツからメールが来た。





正直

メールを開くのが怖かった。






『桜咲くかな…



逢いたいよ』




俺もだよ





アイツからのメールを保護して





二人を邪魔する問題に遂に蹴りを着けた。






当然 



失った。




仕事も居場所も




夜の飲食店で毎晩バイトしながら



毎晩桜の咲く夢を見た。 



逢いたい気持ちと

逢う怖さと葛藤する日々を送ってるうちに




少し早い桜が咲いた。




心踊るとはこの事なんだろう






アイツにメールした。



『最期二人で逢ったホテルの前に
週末の土曜日 



待ってる。』




了解です




と無機質な返信が来て 
僕の桜は少し暗くなった。





1週間ひたすらバイトして




土曜日を迎えた。




高鳴る鼓動を抑えて




あの場所に行った。





タクシーを停めると



アイツは下を向きながら
少し早く到着していた。





黙って抱き締め

フロントから鍵を預かると
エレベーターに乗った。




エレベーターの中でのキスは
一時間にも感じた。




 

部屋に入ると 

抑え切れなかった感情が破裂し、


熱くなった下半身を隠して

直ぐにベッドに入った。




キスは心地よく


胸から脚の先までくちづけして

髪の毛を撫でるとアイツが
喘ぎながら言った。





優しく挿れて…       




抑え切れない程に膨張した
自分のモノを



目を閉じながら
ゆっくりと重なった。





痛いよ… 





ゴメン   




と言いながら二人は一年振りに
一つになって




ゆっくりと眠っていた。





『もう朝だね』




その言葉に目が覚めた僕は


カーテンを開いた。 




美しい桜がそこにはスクリーンのように映し出されていた。






フロントから退出を言い渡されるコールがなり



二人はキスをしながら

そそくさと着替え 




フロントに向かった。





間抜けな僕はホテルのカギを部屋に置いて来ていて




急いで取りに戻りながら
心で呟いた。









アイツを守る





フロントに戻ると


自動ドアの向こうが眩しく



自動ドアのミラーに映し出された二人は


恥ずかしい気持ちになり、





二人手を握りしめながら


ホテルを後にした。






春の日差しの下を 


ゆっくりと歩いた






二人の『ゲイ』が。









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